脂漏性角化症とは

 

脂漏性角化症

脂漏性角化症は、別名「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」や「老人性いぼ」とも呼ばれています。

 

日光に当たりやすい首や顔などにできやすく、小さなシミが盛り上がって、ポツポツザラザラしたイボのように見える。前胸部や体にもできることも。

 

老化して皮膚の表皮が角化してしまった(角質層の肥厚すること)もので、このポツポツとできているのは皮膚の一部です。

 

シミになりやすい年齢

 

特に40代になると、男女の性別を問わずに現れる症状です。

 

手のひらや足の裏以外の全身にできます。加齢と共にだれにでもできるもので、80歳~90歳になると、ほぼ100%の人に現れると言われています。

 

シミができやすい場所

 

脂漏性角化症ができやすいのは、顔、首、前胸部など、日光を浴びやすくて皮ふに摩擦のダメージが起こりやすい部分に多くみられます。

 

首にできたものは一般的に「首イボ」と呼ぶこともありますが、厳密に言うと首イボは脂漏性角化症ではありません。しかし、治療などでは脂漏性角化症と同じように扱われています。

 

シミの色、形

 

濃い褐色から肌色の病変で、大きさは1mm程度から5cmの大きなものまであり、形や大きさは様々。

 

人によってはかゆみなどの症状も出ることがあるので、脂漏性角化症を知らないと悪性の病気を疑って病院に行く人もいて、そこではじめて脂漏性角化症と診断されるケースもあります。

 

脂漏性角化症の原因は?

 

 

シミ 脂漏性角化症

脂漏性角化症の原因は、太陽光に含まれる紫外線によって、皮ふの表皮基底細胞の遺伝子に異常が起き、表皮に異常ができてしまうことが原因と言われています。しかし、遺伝子異常とは言っても、病気というわけではなく遺伝的なものや、老化現象として起きてしまうもので、誰もが発症する可能性があります。

 

皮ふに異常が起きた部分の表皮基底細胞が増殖し、皮膚表面からもりあがって表皮の色素細胞を刺激し、大量のメラニンができることで濃い色のシミになります。

 

このシミの中でも、表面が平たんなものが「老人性色素斑」、表面が周囲よりも盛り上がったものが「脂漏性角化症」になります。

 

 

また、老人性色素斑だったシミが次第に皮ふから盛り上がってきて脂漏性角化症になることもあります。脂漏性角化症は、年齢を重ねると誰にでも現れるものなので、加齢による皮膚の遺伝子異常が脂漏性角化症の主な原因と言えるでしょう。

 

※20代など若い頃から脂漏性角化症ができてしまった場合は、体質や遺伝的なものが考えられます。自然に取れたり、剥がれたりはしません。

 

脂漏性角化症は自然に消えることはありません。できてしまった場合は医療機関に相談しましょう。
※脂漏性角化症は老化現象なので、予防や治療をしても、次々にできてしまうことはあります。

 

 

脂漏性角化症セルフチェック

 

自分にできているシミが脂漏性角化症なのか、セルフチェックをしてみましょう。

 

  • 若い時に積極的に日焼けをしていた
  • 日焼け止めはあまり使わない
  • 肌をみせるデザインの服をよく着る
  • シミの部分が盛り上がっている
  • ポツポツとしたイボができている
  • 年齢が30代以上である

 

上記の項目に当てはまる場合は、脂漏性角化症の可能性が高いです。脂漏性角化症は一度できると、自力では治療できませんので、気になる場合は皮膚科を受診してみてください。

 

脂漏性角化症の治療法と予防法

 

脂漏性角化症はいわゆる老化現象なので、予防をしていても40代以上になると殆どの人に現れ、80代から90代になるとほぼ全員に現れてしまいます。

 

予防法

 

極力日を浴びない

 

どうしても発症を遅らせたい場合は、10代の頃から日光を浴びないようにすることです。とはいえ、さすがにこれは難しいですよね。また、脇の下、脇腹、腹部、鼡径部(股)、陰部、大腿(太もも)といった、殆ど日に当たらない部分にも発生しますので、この方法を試しても絶対にできないとは言い切れません。

 

紫外線対策をする

 

日光を浴びないことは不可能に近いので、日頃から紫外線を過剰に浴びないように、UVカット対策をおこないましょう。

 

UVカット対策グッズ

  • ・日焼け止め
  • ・紫外線吸収剤が配合の化粧下地やBBクリーム、CCクリーム
  • ・手袋
  • ・日傘
  • ・サンバイザー(洗濯物を干す時など)

 

漢方で予防する

脂漏性角化症の漢方治療法

 

また、漢方薬でこのイボができにくいように予防、改善を促す手もあります。

 

老人性のイボに良いと言われている、ヨクイニンエキスの入ったハトムギ、ドクダミや杏仁エキス(アプリコットオイル)を使用した原液や化粧品、お茶やサプリメントなどを活用するなどの方法が有名ですが、イボに効果があるかどうかは個人差があります。

 

麻杏ヨク甘湯(マキョウヨクカントウ)

 

麻杏ヨク甘湯(マキョウヨクカントウ)はイボ治療に多く用いられる漢方薬で、体の中からイボのできにくい体質へと改善します。

 

成分:麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、ヨク苡仁(ヨクイニン)、甘草(カンゾウ)

 

桂枝茯苓丸加ヨク苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)

 

桂枝茯苓丸加ヨク苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)はイボ治療では定番の漢方薬です。イボに効果があるヨク苡仁(ヨクイニン)が使用されているので、肌の異常を改善してイボの状態を緩和してくれます。

 

成分:ヨク苡仁(ヨクイニン)、桂皮(ケイヒ)、薬(シャクヤク)、桃仁(トウニン)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)

 

排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)

 

排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)は肌にできた腫れや肌荒れなどの皮膚疾患に効果がある漢方薬。肌疾患への効果が高いためイボにも作用し、イボを少しずつ徐々にに緩和してくれます。

 

成分:桔梗(キキョウ)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)枳実(キジツ)

 

漢方薬は副作用が少ないと言われてはいますが、体質や他に服用している薬があれば、必ず専門家や医師、薬剤師に相談をしてから使用するようにしてくださいね。

 

治療法

 

脂漏性角化症をレーザー治療するには

 

脂漏性角化症の治療方法は、基本的に医療機関での外科的な治療になります。

 

液体窒素による冷凍凝固治療や、電気メスでの切除、電気焼却、光治療、炭酸ガスレーザーなど、保険適応のものから保険適応外のものまで幅広くあります。

 

脂漏性角化症の治療で治療後に傷跡が残るのは心配ですよね。シミが消えてもそこに傷跡ができてしまって、また別の問題と悩みになってしまいます。

 

シミはもちろんですが、イボや炎症、吹出来物などを治療する際に傷跡が残るかどうかはそれらの疾患が皮膚のどれくらいの深さにできたものかがポイントです。

 

脂漏性角化症は、皮膚のごく浅いところ表皮と呼ばれる部分にできるので、治療後に傷跡が残る可能性はあまりないと言っていいでしょう。しかし、ケアを怠ると炎症跡になってしまう場合もあるので注意です。

 

液体窒素

 

脂漏性角化症の治療方法を色々と挙げましたが、その中でももっとも代表的でポピュラーな治療方法は「液体窒素」によるものです。

 

液体窒素で脂漏性角化症を治療する方法を簡単に説明すると、の細胞を凍らせて溶かすことを繰り返します。そうして脂漏性角化症になった表皮の部分をかさぶたとして剥がして取っていくんですね。

 

具体的な方法ですが、マイナス196℃の液体窒素を綿棒で脂漏性角化症に2−3回当てるだけです。もちろん多少の痛みは伴いますが、約1日程度で消失するので心配しなくて大丈夫でしょう。

 

この後、1週間程度で該当の病変部位がカサブタのようになって剥がれ落ちます。この1回で完了することが多いですが、広い範囲だったり数が多い場合には2週間に一度の割合で通院して、何度かに分けてコツコツと治療していきます。

 

しかし、この方法は半年から2年程度の炎症後の色素沈着が起こる場合もありますし、再発率も比較的高いようですので注意が必要です。

 

値段(保険適応) 三割負担 500円〜

 

炭酸ガスレーザー

 

炭酸ガスレーザーで脂漏性角化症を治療する方法ですが、炭酸ガスレーザーで脂漏性角化症の部分を削り取ります。液体窒素に比べると、力業のようなイメージですね。

 

施術方法・治療中の流れ

 

  1. 脂漏性角化症のある部分に局所麻酔をします。
  2. 炭酸ガスレーザーで脂漏性角化症を削り取ります。
  3. 施術から約2−3週間するとピンク色の浅い皮膚ができます。
  4. その後3か月くらいすると皮膚が厚くなり、周囲の皮膚と馴染みます。

 

削り取るといっても脂漏性角化症は表皮のごく浅い部分にあるので、出血もなく削った後に縫合をすることなどはありません。皮膚の再生まで塗り薬を塗るのですが、患部には絆創膏を貼るので、顔だと暫くの間は目立ってしまうかもしれませんね。

 

液体窒素よりもこの炭酸ガスレーザー施術は再発率が低いとされ、ほぼ一度の施術で除去ができます。また、施術時間は10分程度と炭酸ガスレーザーの治療そのものにはそんなに時間はかかりません。

 

術後に薬を塗って絆創膏を貼るという術語ケアが必要なのが手間と感じる人もいるかもしれません。

 

値段(保険適応外) 三割負担 5,000円〜〜

 

電気メスでの切除

 

電気メスでの脂漏性角化症の治療は電気焼却のことを言います。具体的な方法ですが、局所麻酔を行った後に電気メスで脂漏性角化症を焼きます。ガスバーナーで焼きとるというイメージだと説明しているところもあります。

 

この治療方法のメリットは保険適応できる保険治療だということ。保険3割負担で千数百円台で数個の治療が可能です。数か多くても負担額が少なくすむのは大きなメリットですよね。

 

たまにレーザー治療で保険が利いたという人がいますが、厳密にはレーザー治療ではないのですが、この電気メスでの治療を指している可能性が高いです。

 

しかし、デメリットも多く、液体窒素や炭酸ガスレーザーの治療に比べて大きな目立つ傷跡が残り、軟膏を塗って大きめの絆創膏を貼る必要があります。また、傷が盛り上がってしまいケロイド状になってしまう可能性もあります。

 

値段(保険適応) 三割負担 1,500円〜

 

光治療(IPL)

シミ 脂漏性角化症

脂漏性角化症の光治療(IPL)フォトフェイシャルと呼ばれ、医療機関のみで受けることができる美肌スキンケアとも言われています。

 

脂漏性角化症などのシミや色素沈着はもちろん、そばかすやくすみ、しわ、ほくろ、たるみ、などの肌表面の問題だけではなく、毛穴開きといった多種多様な肌トラブル全般をを改善することができ、老化現象を医療的にアプローチするするためアンチエイジングの効果が期待できます。

 

また、永久脱毛もできオールラウンドなフェイシャル治療と言っていいでしょう。

 

光治療の仕組みを説明すると、脂漏性角化症に強い光を照射すると黒色のメラニンに反応して、熱を発生しシミとなっている部分の細胞に損傷を与えます。

 

しかし、この方法では取れ残りもあり、一度消えても半年から一年程度で再発することも多いので、美容目的で比較的薄いものを除去するには向いていますが、しっかりとできてしまったものには不向きです。

 

値段(保険適応外) 三割負担 10,000円〜

 

Qスイッチレーザー

 

Qスイッチレーザーによる脂漏性角化症の治療方法ですが、Qスイッチレーザーは強いパワーのレーザー光を利用して脂漏性角化症になっている周辺の皮膚組織の熱損傷なく、傷を残さずにメラニン色素だけを破壊してくれるレーザーを用いたレーザー治療のことを言います。

 

YAG(ヤグ)、アレキサンドライト、ルビーそれぞれ特性がありますが、どれも治療効果は十分あり、色素のある部分を完全に除去することが可能なため、治療後の傷が残らないのが最大の特徴です。

 

しかし、脂漏性角化症の場合は表皮基底細胞が残ってしまうため、治療として完全に取り去るという意味では難しい部分があります。

 

値段(保険適応外) 三割負担 5,000円〜

 

脂漏性角化症の治療後はアフターケアも重要

 

脂漏性角化症を治療した後はアフターケアを怠らないようにしましょう。多額の治療費をかけて治療したとしても再発したらもったいないですよね。また、アフターケアは新しい脂漏性角化症の発生を抑える予防にもなります。

 

脂漏性角化症の予防にオススメの市販薬

シミ対策にはアフターケアを習慣化させる

 

アフターケアとして、重症化していない場合の老人性イボの市販薬なども有効な予防方法になります。市販薬を選ぶ際は商品に「医薬部外品」や「医薬品」と書かれたものを選ぶのがポイントです。

 

 

横山製薬 イボコロリ 内服錠

シミ 脂漏性角化症

横山製薬イボコロリ 内服錠は飲み薬タイプで、ヨクイニン配合の第3類医薬品です。
1日分で、ヨクイニンエキス1998.0mgが摂取できます。

 

横山製薬 イボコロリ 液体タイプ

シミ 脂漏性角化症

横山製薬イボコロリの液体タイプは塗り薬タイプでサリチル酸が主な成分の第2類医薬品です。患部に塗布すると乾燥し、厚く硬くなった皮膚をやわらかくしてイボを取り除きます。

 

横山製薬 イボコロリ絆創膏ワンタッチ

シミ 脂漏性角化症

横山製薬イボコロリの絆創膏を貼るタイプです。こちらもサリチル酸が主な成分の第2類医薬品。薬剤部に粘着性があるので、密着して有効成分サリチル酸の浸透効果を高めます。

 

小太郎漢方製薬 ヨクイニンS「コタロー」

シミ 脂漏性角化症

小太郎漢方製薬のヨクイニンS「コタロー」は名前の通りヨクイニンエキスが主な成分の第3類医薬品。ハトムギの種皮を取り除いた種子(ヨクイニン)からエキスを抽出し、飲みやすい錠剤にしたものです。

 

クラシエ薬品 ヨクイニンエキス顆粒「クラシエ」

シミ 脂漏性角化症

クラシエ薬品のヨクイニンエキス顆粒「クラシエ」は顆粒タイプのヨクイニンエキス。第3類医薬品。イボのほかに肌荒れ予防にも。ヨクイニンエキスは皮膚のあれにすぐれた効果のある生薬として用いられています。

 

脂漏性角化症はうつるの?

 

脂漏性角化症はよく「うつる」と言われますが、これはイボができたところの周りにどんどん増えていくことに、ウイルスなどで感染するような感染症だと感じるだけで、実際には感染しません。

 

手で触った後に他のところを触ったからと言って増えるわけではありませんし、もちろん他人に感染することもありませんので、安心してください。

 

脂漏性角化症は自己判断して放置せず、おかしいなと思ったら、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。

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